ラボメントーク

所長、育児って……
正直、何をやっても「それじゃない」って言われません?

あるあるだね。
やったら怒られ、やらなくても怒られる。

じゃあ、父親って何をすれば正解なんです?

正解を取りに行くと、だいたい失敗する。
育児初期は特にね。

え、詰みゲーですか?

いや。
前に出ない、でも離れない。
この立ち位置を取れるかどうかで、だいぶ変わる。

前に出ないのに、存在感は出す……?

そう。
今日はその話をしよう。
「男性は、育児の戦略担当でいい」という話だ。
はじめに
子育ての初期(出産~6か月程度)は、女性に主導権があることを男性が理解した方が育児は安定しやすいと感じます。
特に母乳育児をしている場合、授乳や生活リズムの中心はどうしても母親になりますし、無理に役割を均等にしようとすると、かえってオペレーションが混乱することもあります。
一方で、「イクメン」という言葉が広まったことで、
「父親も前面に出て、同じように主導しなければならない」
というプレッシャーを感じている男性も少なくありません。
ですが、育児初期において重要なのは、主導権を取ることではなく、全体を支えることです。
父親が無理に現場の指揮を取ろうとするよりも、役割を見極め、家庭全体が安定する形を作る方が、結果としてうまく回ります。
では、父親は何を担えばいいのか。
私は自身の経験から、「男性は育児の戦略担当」という考え方に至りました。
戦略と戦術で考える、育児における役割
育児においても、「戦略」と「戦術」という考え方は役立ちます。
- 戦略:どこを目指し、どんな方針で進むか。
究極的には、「どんな子育てをしたいか」「子育ての目標をどう置くか」。 - 戦術:戦略を達成するために、今この瞬間に何をどうするか。
日々の具体的な行動やオペレーションの設計や計画です。
この二つを分けて考えると、
「今は前に出られない」=「何もできない」
ではないことが見えてきます。
育児初期にも、夫にできる事はたくさんある
育児初期には授乳が最大の負担なのは事実ですが、実際には他にも多くのすべき事があります。
- オムツ替え
- 泣いたときの抱っこ・あやし
- 子どもに話しかける・遊ぶ
- 寝かしつけ
- 掃除・洗濯
特に背中スイッチがONになった子どもを寝るまで抱っこといった作業は重労働。
筋力や体力のある男性の方が得意なケースも多い。
泣く子どもを泣き止ませベッドに置くスキルを身に付けると家庭内評価は爆上がりです。
それでも「授乳」は妻の領域になりやすい
一方で、授乳は事情が違います。
特に母乳育児の場合、授乳そのものは妻の専担になりがちです。
その結果として、
- 授乳間隔
- 生活リズム
- 1日の時間配分
こうした部分は、自然と妻主導になります。
ここで重要なのは、
主導権が妻にあるからといって、夫が完全に受け身になっていいわけではない
という点です。
受け身にならず、「できること」を拾いに行く
授乳は代われなくても、周辺には必ず夫が担える作業があります。
- 哺乳瓶を洗う
- 消毒や準備をする
- 夜間授乳後の片付けを引き受ける
正直な話、
哺乳瓶を洗うだけでも、意味はあります。
男性視点で大切なのは、
「今、自分が介入できる余地はどこか?」
を探し続ける姿勢です。
離乳食が始まると、夫の育児関与度が上がる
離乳食が始まると、状況は少しずつ変わります。
- 食事の準備
- 食べさせる役
- 後片付け
これらは、授乳ほど身体依存ではありません。
そのため、夫が戦術・オペレーションに関与できる割合は確実に上がります。
このタイミングで自然に役割を取りに行けるかどうかが、
育児への関わりが一過性で終わるか、継続的なものになるかの分かれ目です。
絵本の読み聴かせは、初期からできる夫の貢献
育児初期から一貫して、夫が担いやすい役割があります。
それが、絵本の読み聴かせです。
- 授乳と競合しない
- 時間帯を選ばない
- 声と存在で関われる
戦術としてもシンプルで、
戦略としても長期的な価値を持つ行為です。
「やることがない」と感じたら、学ぶ時間にする
もし育児初期に、
「正直、手持ち無沙汰だ」
「前に出ると邪魔になりそうだ」
と感じる時間があるのであれば、その時間を学習時間にするのも一つの手です。
- 食育
- 教育
- 発達
- 長期的な子育て観
これらは、すぐに成果が出るものではありませんが、
後から確実に効いてきます。
我が家の失敗談:手を引きすぎた結果
正直に言うと、我が家でも失敗しました。
育児初期、
「自分にできることはもうないのかな」
と感じてしまい、私は一時期、あえて手を出さないようにしていた時期があります。
結果、どうなったか。
後になって、妻にきっちり叱られました。
「やらなくていい、じゃなくて
“気にかけてほしかった”んだと。」
完全に受け身になることは、
支援ではなく、放置だったのだと気づかされました。
情報は「察する」のではなく「共有を受ける」
育児初期のトラブルの多くは、ミスコミュニケーションです。
- 言ったつもり
- 分かっていると思った
これを防ぐには、
意図して情報を共有してもらう姿勢が必要です。
戦略担当としての現状把握。
これは口出しではなく、支えるための前提条件です。
戦略は「決める」ものではなく「合意する」もの
育児に関する戦略は、トップダウンでは回りません。
- 情報を集め
- 整理し
- 選択肢を提示する
そして、必ず合意形成をする。
このプロセス自体が、家庭の安定につながります。
長期プランは、早いうちにイメージだけ共有する
育児初期こそ、
長期プランの方向性だけでも話しておく価値があります。
- 仕事復帰
- 保育園・幼稚園
- 教育観
細かく決める必要はありません。
「いずれこうなればいいね」という共通認識で十分です。
情報過多の時代、冷静さも戦略
今の育児は、情報が多すぎます。
YouTube、SNS、ブログ、専門家の発信。
調べれば調べるほど、「正解」が分からなくなります。
ここで父親ができる大事な役割があります。
- 情報を取捨選択する
- 極端な事例に引きずられない
- 「今の家庭に必要か?」で判断する
細かいノウハウに振り回されず、
大局(全体像)を見て冷静に整理する。
これも立派な戦略担当の仕事です。
最後に… 育児初期の男性の第一の役割は「妻の寄り添い役」
育児初期、父親は無力感を覚えやすい。
でも実際には、役割ははっきりしています。
- 主導権を奪わず
- 育児のオペレーションを混乱させず
- できるところから確実に担う
そして、何より大事なのが、
- 妻に寄り添う
それが、育児初期の家庭における男性の役割です。
赤ちゃんはまだ喋れず意思の疎通はできません。
この期間、主に女性が子どもを育てるケースが多いと思いますが、
非常に孤独を感じる期間です。
もし迷ったら、こう考えてみてください。
自分は、この家庭の戦略担当だ。
そしてその前に、愛する妻のたったひとりの夫だ。
その視点を持つだけで、
育児への関わり方は、確実に変わります。
ラボメントーク

所長、結局……
育児初期の男性の役割って、何だったんですか?

戦略担当。
……だと思っていた。

思っていた、ということは?

本当は、もう一つあった。
いや、こっちの方が先だったかもしれない。

なんです?

妻の、寄り添い役。

寄り添い役。

正しいことを言う役でも、
合理的な判断を下す役でもない。
ただ、隣に立って、話を聞いて、
「大変だよね」って言う役。

……それ、戦略とか以前の話ですね。

ああ。
でも当時の僕は、そこを飛ばしてしまった。

どうして?

役に立とうとしすぎた。
理解しようとする前に、整理しようとした。

あー……。

後になって言われたよ。
「解決じゃなくて、寄り添ってほしかった」って。

それ、刺さりますね。

育児初期の戦略で、
一番大事だったのはこれかもしれない。

何です?

“妻を一人で戦わせない”こと。

戦略担当、まずはそこから。

そう。
戦略は机の上で立てるものじゃない。
隣に座るところから始まる。

……補足します。
寄り添いは「感情の最適化」であり、
家庭システム全体の安定性を最大化します。

そう、それが子育て家庭のリアルだ。
(余談)女性の変化について
出産後、妻の様子が以前と変わることは珍しくありません。
- 感情の起伏が大きくなる
- 判断が揺れる
- これまで気にしなかったことを気にする
ここで父親がやってはいけないのは、
「論理的におかしい」「前と言っていることが違う」と反応することです。
それは正論かもしれませんが、正解ではありません。
育児初期の変化は、
ホルモン、睡眠不足、不安の複合要因によるもの。
戦略担当として必要なのは、
感情の揺れを問題化しないことです。


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